※ニート株式会社は解散してません。法人として存在しています。(2025年現在)
ニートたちで作ったニート株式会社(ニー株)が設立してからほぼ12年。運営におけるあれがダメだ、これがダメだと歴代メンバーも好き勝手に語ってきたが、残念ながらこれらの教訓が生かされることはほとんどなかった。そろそろ次に生かして自分自身が新たな動きをしていくため、初期メンバーである俺、レンタルニートの仲 陽介が好き勝手語ろうと思う。
今回主張したいのは「ニートたちの起業」、そして「望ましくない労働社会からの脱却」という、現代でも求められているであろう試みを思い出そうということである。
終わコン化してしまったニート株式会社を嘆くのではなく、「ニートはクズなので何も出来ませんでした」のひとことだけでおもしろネタとして紹介されがちなニー株では実際には何が起こっていたか、そして初期メンバーである俺自身がそこから何を学んだかをまとめて次に生かそうというお話だ。
まずはニート株式会社の歴史についてちょっと解説。
ニー株はニートというテーマゆえ初期からアンチが多かったり、元メンバーが逆恨みしてたりするのでWikipediaの記述やその他ネットの情報は偏見入っててあまり当てにならない事が多いので気を付けてほしい。
ニート株式会社の歴史
2013年 4月、「救世主、求む」という大層なキャッチコピーとともに設立メンバー募集がHPにて告知される。テーマは「全員がニートで、全員取締役」。説明会や準備期間を経て11月、メンバー167人で正式に設立。全員が均等に株を所持する。
2014年~2015年 株主総会などもやるが決議などが非常に面倒だし、まとまらない。ルールづくりで度々揉める。事業が始まる気配がないので、仲はそれを見越して「レンタルニート」を一人で始める。
2016年 過激派メンバーから「ニート株式会社解散案」が提出される。全員に議決権あるので法的にこれが可能であった。結果、多数決で否決され過激派勢力は脱退。再発防止のため仕組みが整備されメンバーに議決権がなくなる。
2017年~ 年1回、追加の新規メンバー募集を開始。さらに毎年、代表取締役を選挙で数名決定して決め直す流れに。この頃から「コミュニティを目指す」ような感じの募集要項になっていた。
2020年~ コロナでリアルの集まりが減って過疎化が進む。
2024年~ 企画者の若新雄純氏が株主をやめる。メンバーから新たに3人が株主になり、このタイミングで「全員取締役」もやめた。
2025年現在 Discordサーバを社内SNSとして現状ほぼコミュニティとしてのみ存在。収益性はなく、会費としてメンバーから集めた金を法人税ほか維持費として使って成り立っている。
ここからは自身の実感から語るニー株これがダメだったシリーズ。
■ ルール作りに時間を使いすぎだった
3年目ぐらいにもう自分の中で結論が出てたんだけど、当初の「全員が取締役」で同じ発言権を持つニー株においてルール作りは無駄だった。いずれ形骸化するからである。「組織にはリーダーが必要だ」「ルールが必要だ」などと主張する人はよくいる。概ね正しいかもしれないが、ルールを決めることや維持管理することには時間と労力がかかる。
しかし、「金」というわかりやすいリターンがなければその時間や労力をかけることは現実的じゃない。商売の方が全然進んでないのにルールを決めることがいつまでも話題のメインになっていてはそれぞれの生活にいずれ限界がくる。
当初よくあったのだが、みんなで決め事をするための会議(現地に30人、オンライン参加それ以上ぐらいの規模)があったとして、話がまとまりかけていたところを後から遅れてやってきた人が意見を強く主張し、議題を増やすとか新たな案を出すとかで前提にない選択肢が増えたりして論点がブレるような会議がよくあった。
公共施設の会議室に午後1時から集まり、夜8時ぐらいまで使ってやるもんだから参加者や司会者も疲れてきて、話がまとまらないまま次回に持ち越しみたいなこともあった。とにかく短時間ではまとまらない。そして、何かが決まったとしてもそれは事業を具体的に行っていくための方針とかではなくて、組織の体制づくりとか代表者選びに関する話題がほとんどである。
この流れは設立準備期間の半年ぐらいですでに露呈していた。これを見て、待っていても商売は始まりそうにないなと思ってひとりで始めたのがレンタルニートだった。
普通の会社であればそんな長い議論は普段行っている業務を遂行するための時間が足りなくなるのでどこかで打ち切られたり、ボスとなる人が判断を下し先に進むだろう。しかし、メインの仕事がまだない状態からこんなことをやってては何が大事なのかわからなくなってしまう。
金も環境もないのだから、ベンチャー企業のように小回りの効くすばやさを大事にした方がよかっただろう。
■ 「ニートたちの起業」というテーマがブレてはいけなかった
俺自身がそうだけど、多くのメンバーがニー株に何を求めて入ってくるかといえば「仕事や収入、やることがない現状を変えたい」ということのはずである。ニー株の加入条件は長らく印鑑証明書の提出と出資金数千円の納入であり、それ以外の審査は無かった。ゆえに結構な人数でニートじゃない人がニー株に参加していたりするが(長期的に普通の労働をしていて、辞める予定もない)、それは本来のターゲットではないということを忘れてはいけない。
収入源や「仕事」という生活をすでに確保してしまっているということは、変化しなくても問題がない状態ということだ。設立から時間が経過するほどに金銭面で厳しくなったメンバーは脱退するだろうし、途中で職を得たあともなんとなく参加し続けているメンバーがいたとして、それが多数派になればやはり変化する必要がなくなり、全体の動きが遅くなる。そして、すでに職を持ってしまっている人はリスクを負おうとしない傾向にある。失うものを持ってしまっているからだ。
結局そうやって保守的になり変化する必要がなくなると企画の立案・実行をする人が減り、いつの間にか「起業」がメインコンテンツじゃなくなっちゃうのである。
時代によって新規メンバー募集ページの文言が変わっているため、後半のメンバーの参加動機が起業から離れていっている背景があるかもしれないが、しかし結局は周りが期待して注目していたのは「会社づくり」の部分だと感じる。
それはレンタルニートの活動をする中で周囲から感じていた。レンタルニートのサービスと自己紹介をするとき、ニー株の成り立ちと実際に株式会社を設立していることを説明すると、最初は冗談だと思っていた人も真剣に話を聞いてくれる率が高かったのだ。
やっぱりルール作りなんかに時間かけてないで、企画実行によって周囲のフィードバックを得て手応えを感じなきゃいけなかったんだ。評価を得られるとその行動の価値を実感できる。
■ ニートの社会福祉に傾倒する必要はなかった
近年ほんとに「ニートとメンタルヘルス」が密接な関係にあり、「病気や障害を持っているけどそれと上手く付き合いやっていく」というような話題が注目される事が多い。悪い癖を持った人間が他者と共存していけるのはよいことだが、確たる収益性がない状態で「弱者の居場所づくり」みたいなことをやっている余裕はないと思った。補助金や寄付金で成り立っているNPO団体ではないのだから。
コミュニティで密接な人間関係が生まれると、メンタルおかしな困った人が困った行動をし始めることはよくある。物事に現実的でない完璧さを求めたり、意図しないところで急に怒り出してしまったり、被害妄想で他者を攻撃し始めたり、それが激化して会議を妨げたりといった具合だ。
もちろんニー株では一般的社会に比べればそうした困った人々への反応ははるかにやさしいものであり、明確に排除されるようなことはなかった(当たり前だが、身勝手な行動により一部から嫌われることはよくある)。
これら困った人の問題提起に関して、公正公平に対処していてはもう時間がいくらあっても足りない。俺も代表取締役をやった期間が長かったので、様々な責任を糾弾され、被害者アピールをする人からメーリングリストで全体メールを送られて悪者だったことにされて弁明するという無駄な時間を
よく過ごした。
ルール作りがだいたい無駄であったことと重なるのだが、そうやって問題提起を度々する人がその後ニー株に参加しつづけて組織に貢献するという保証はまったくない。いずれ脱退して責任を放棄してしまえば、誰のための議論だったのかわからなくなってしまう。
二期目のメンバー募集以降、「一つにまとまることをあきらめ、居場所を目指すことにしました」という文言があったのだが、自分はそれを気に入っていなかった。目指すのは仕事づくりだろ!
居場所づくりをすると、ただの傷のなめ合いで終わってしまいがちだ。仕事を作るために参加した人にとってそれでは困る。
ここで言いたいことは、病気のおかしな奴らに居場所を作ってやる必要はないということではなく、「仕事」に着目しようということ。
ニートたちで集まったのは「仕事(がない)」というテーマで集まったわけであって、本人たちの「人間性」の共通点で集まったわけではないということだ。人物に着目するんじゃなく、仕事や社会のあり方のほうに着目したほうがニートだけじゃなくすべての人にとって関係のある話題なので望ましい。
当ニートマガジンにおいても、「ニートあるある」を語るのではなく、「社会あるある」を語っていったほうが多くの人にリーチできるのではなかろうか。ゆえに今回の「働きたくない、でも生活はある」はとてもよいテーマだと思う(なんか普通に働いてる人の言葉みたいじゃない?)。
■ 結局、一般社会と同じで出る杭が打たれてる
2年目に代表取締役になったときに体験したのだが、そもそも選挙を勝ち抜いて代表取締役になることが出来た理由は、なるべく中立の立場を貫き、多くのメンバーに受け入れられるような振る舞いをしたからだと思う。しかし、いろいろ事件は起こった。ある時社内SNSとして利用していたシステムにログインしようとしたところ、「ログイン認証が必要である」というような英文が表示され、システム公式から届いたメールのURLを踏まないと復帰できない症状が出て、それが頻発し数ヶ月続いたのである。
これは一部メンバーから密かに共有された情報で発覚した。IDブロックやBANみたいなもので、メンバーの誰かが本来は脱退済みメンバーの除名をするときに使う操作を不正に行い、ログインの妨害をしていたのである。その被害を若新さんほか有力メンバー数名が継続的に受けていた。
これはちょっと恐ろしい。明確に自分を嫌っている人が閉鎖的コミュニティ内にいるのが露呈したわけだから。社内SNSにログインするモチベーションが下がったのがわかった。
後に操作ログから発覚するんだけど、それは当事者それぞれにとって思いもよらない人物だった。この件で普段の振る舞いからやってないのに疑われていた人もいる。
ニートは結局「逆張り体質」な人種も多かったりするので、正当に評価された人物を否定し始めるような人もいる。代表取締役の選挙をやるときに社内SNSで名指しのネガキャンを行い、有力者下ろしをする勢力もいた。人間関係として、大して関わったことのない相手でもそういうことをしてくる。
毎年の代表取締役選挙に出馬するたび、もう完全に政治の世界も同じなのだろうなと思った。目立ったからマークされて過剰に批判され、それに容易く扇動される人々がいる。
一時期からもうこうした代表者選びとか、形骸化したルールの再構築とかの話題ばかりになり、どんな企画を考えて実行するかというような話題は減っていった。
方向性がもう「誰かに何かをさせること、させないこと」に関する話ばっかりで、「自分が何をやっていきたいか」が全くなくなる。このメカニズムに気づいたときにはもう組織づくりをやろうという気力は俺の中からなくなっていった。
体制は変わり、現在では自分は代表者ではあるが株主ではないので肩書は名ばかりである。なんら主導はしていない。
■ ニート株式会社、今後どうなるの?
わかりません。現在は結局ただのコミュニティであり、実質的には年額5500円のオンラインサロンであるようなもの。
さっさと辞めて別の集まりを新しく作りゃいいんじゃないの?という意見をよく受けるが、一理ある。「ニートたちの起業」とか「実験場」とかいう割にはみんなぜんぜん起業してないし実験してない。ちゃんと大学を出た身として思うが、実験ってのは繰り返し行うもんだ。「ニート株式会社は失敗でした、ハイ終わり」じゃなくて、この方法でうまく行かないということがわかったら条件をちょっと変えたり、ごっそり変えたりして次のやり方を試して何度もやるのが実験だ。
自分自身はレンタルニートの経験から人々のいろんな生活の事情を知ったし、ゲーム代行事業も始めて多少マシな収入を得たりするようになってきて手応えを感じている。
そして労働社会に疑問を投げかけ、新しい働き方を模索するというのは時代が流れた今も変わらず求められていると感じる。
「現代社会にはこれが必要らしい」ってのは結構浮かび上がってきている。
「ニートたちで作るニート株式会社」っていうテーマは今でも気に入ってるんだよなぁ。今回の特集記事にも書いたのだが、ニー株が過疎化して停滞しながらも、例のゲーム代行事業によって個人的な収益は過去最高に達していたりする。「ニートたちで作った会社でゲームを仕事にすることが出来ました」って設立時点のメンバーが聞いたら大喜びすると思う。
おそらく自分は、この経験を生かしニート株式会社「みたいな」集まりを今後もやっていくんじゃないだろうか。年齢を重ねたことで今回書いた通り、人々の愚かさを知ったのでもう同じことが起こっても冷静に対処できそうだ。
というわけで反省会でした。次の作戦を考えよう。

