割り切ってがんばれない

茅沼 静馬

私は昔から、「割り切ってがんばる」ということができない性格だった。学生時代の頃からそうだった。例えば「今日がんばったら明日から三連休だ」と思っていても、今日どうしても嫌な授業がある、嫌な行事がある、となると、どうしてもがんばれなくて学校を休んでしまうような性格だった。

学校を卒業して社会人(といってもほとんど無職期間の方が長い)になったらそれが顕著になった。学校と違って、仕事だったら嫌でも行けば行った分だけお金になって返ってくる。長く勤めれば有給ももらえるし、ボーナスや寸志ももらえる。

……ということはよーくわかっているのだが、どうしても「働きたくない」という気持ちが先走って、「お金もらえるからがんばろう」と思うことができない。

この私の性格と真逆なのが妹だ。私の妹はとにかくお金が大好きで、お金がもらえるからどれだけパワハラや嫌なことをされても働くことが全く苦痛ではないそうだ。平日はフルタイムで仕事に行っているのに、それに加えて土日に副業で単発バイトを入れてどんどん働いている。もらったお金はどんどん投資に回して、NISAに飽き足らず、好きな会社や目ぼしい会社を見つけては株を買いまくっている。先日、総資産は五百万を超えたと言っていた。二十代なのにすごいなぁと思う。私なんてこの間バイト辞めたから総資産二万円くらいだ。きょうだいでもえらい違いである。

この、「お金のためにがんばれるかがんばれないか」という違いに、お金への強い思いが関係しているのかなぁ、と思った。妹は億万長者になりたい!と豪語するくらいお金が大好きだが、私は自分が生きていける分、欲しいものがそれなりに手に入る分のお金があればそれでいいという欲求しかない。もちろん私もお金が欲しいなぁと思うときはあるけれど、それは決まって目の前に欲しいものがあったり近日中に行きたいイベントやライブがあったりするときくらいで、妹のように常に「お金お金!目指せ億万長者!」というわけではないと気づいた。

お金の話になってしまったけど、お金以外のご褒美があったとしても私は割り切ってがんばることが苦手だ。先ほど例に挙げた三連休もそうだし、数か月後に推しのグッズが届くとか、ライブやイベントに行けるとか、そういう楽しい予定がたくさん目の前にあったとしても、それらのために割り切ってがんばるということができない。

目の前にどれだけご褒美があったとしても、私はほんの一センチの段差のような壁さえも越えられない、そういう性格なのだ。

私の労働に向いていない、社会不適合な性格はここから来ているのだと思う。社会で働いている人たちは、なんやかんや自分の中でうまくご褒美やモチベーションにつながる何かを用意して、それらのために割り切って働いているのだと思う。でも私はそれができない。ご褒美もモチベーションも、「労働」の前では全く意味をなさないのだ。

この性格に関して、なんかいい対策とかないかなぁ~と思って検索してみたこともある。「ご褒美 がんばれない」みたいな感じで。そしたら「自分のためにがんばれなくても、人の幸せのためにがんばってみましょう」みたいな、もっとできるわけがない答えが出てきて横転した。できるわけがないだろう。自分のために働くことができないのに、なんで他人様のために働くことができるのか。無理に決まっている。

でも検索してひとつ分かったことがある。「私のこの性格は、まさに『怠惰』そのものなのだ」ということだ。

私が怠惰な性格だということは分かっていた。いつも家でダラダラ寝転んでいるし、働くことも運動することも大嫌いで、一日の半分は寝て過ごすような人間だ。怠惰なことは重々承知していた。でも、ダラダラしていることだけが怠惰ではない、ということが分かった。

目の前にどれだけ良いことが待っていても、目の前の段差すら乗り越えられないという性格も、「怠惰」なのだそうだ。ご褒美がないとがんばれない、ご褒美があったとしてもがんばれない、がんばったことに対して対価がもらえるとしてもがんばれない。この性格も「怠惰」らしいのだ。

今まで、「どうして自分は割り切ってがんばれないのだろう」とずっと思っていたけれど、今回答えが判明した。私は

根っからの「怠惰な人間」だったからだ。

もちろん、「怠惰な人間だから」を理由に他人様に迷惑を掛けてもいいとは思っていない。怠惰を理由に好き勝手するつもりもない。でも、割り切ってがんばれない理由が分かったのはうれしかったし、逆に怠惰なりにがんばり方を模索することもできるのではないか?とも思えるようになった。

もし、私と同じように、対価もご褒美もモチベーションにならなくて割り切ってがんばれない人がいたら、私と同じように「生まれながらにして怠惰」なのかもしれない。そのことが分かれば、怠惰なりになにかがんばれる方法が見つかるかもしれない。怠惰同士、お互いがんばって生きていこう。

← vol.4 へ戻る